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『日本歯技』2017年6月号巻頭言



伝承と創造

 わが国での歯科技工の源流をたどると、鎌倉時代には全国的に普及していた痕跡の残る「木床義歯」技法の独自の発展という特徴に行きつく。しかし、文献資料他にその作り手の生活や技法を記したものは少ない。他の技術と同様に伝承され後世に受け継がれてきた。明治期には、貪欲に西洋の各種の知識の吸収を図り後の発展の礎とした。歯科医療も西洋からの技術を導入することにより、新たな発展の道を拓いたが、歯科技工の担い手の記録は少ない。
 4月8日、広島大学霞キャンパスにおいて石碑の清掃活動が行われた。現在は廃校となり同大学歯学部口腔健康科学科へ伝統が引き継がれた広島大学歯学部歯科技工士学校の創立30周年を記念し、2003年3月13日、同学同窓会から同大学歯学部に寄贈された石碑である。石碑に込められた想いと催事の詳細は当事者から別途報告されたであろうが、歯科技工を担う我々歯科技工士が、己の歩んだ道を後の世に残そうとする営みは、時に見失いがちになる自己の立脚点を確認することにもなる。
 現在、本会では創立60周年を記念する会史の編纂作業が進行している。50周年史の編纂から10年経ったことから、地域組織を含めてこの間の記録を留め置くことが主な目的である。組織にとって10年は「光陰矢の如し」であるが、歴史を正しく伝承することは目標を見失わないために必要な活動であり、過去を知ってこそ組織の未来創造に繋がるのではないか。
 日本社会は急速な少子化と高齢化によって人口減少が進みつつある。その先は、大袈裟ではなく、従来の産業や企業の在り方などの既成概念を前提から問い直すことになるかもしれない。当然、歯科技工士も社会環境の変化に無関心ではいられない。環境の変化と技術や機器の進歩の中で未来の歯科技工はどう変わるのか。歯科技工の礎を築いた先人が歩んできたように、今、私たちが次世代につなぐために、伝承と創造の道を歩んでいる。
 
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