『日本歯技』2022年7月号巻頭言



一人で自営する歯科技工士が「労災保険」に加入できる

 社会保険とは、強制加入を原則とする国家的相互扶助制度である。代表的な社会保険は、公的医療保険、公的年金、公的介護保険で、公的労働保険が加わる。ここに「公的」が付くのは、諸外国では民間医療保険、民間年金、民間介護保険が当然だからである。
 このうち公的労働保険は、公的雇用保険(失業保険)と公的労災保険(労働者災害補償保険)で構成される。この労働災害補償の対象には、ケガや病気の療養に留まらず、遺族補償、生活の安定を図るための給付等をも含んでいることから、公的労災保険はケガ補償に留まらず生活をカバーする制度である。
 そもそもこの保険は「労働者」を対象とする。そのため、かねて「労働者ではない者」はこの保証制度に加入できなかった。したがって一人で自営する歯科技工士は、公的労災保険に加入できないことになっていた。
 令和4年5月24日、一人で自営する歯科技工士が「国の労災保険」に加入できる省令改正が行われた(※)
 保険である以上、保険料の掛け率は対象群ごとに異なる。危険な職種は保険料が高く、安全な職種は低い。給付対象は同じでも、掛け率を変え、相互扶助の公平を期している。このたびの歯科技工士の特別加入の保険料率は[ 1000分の3 ]と低率である。保険収支には恒常的に国庫補助が含まれ、制度は極めて安定している。
 ここ数年、日本歯科技工士会は、国の労働政策分野の審議会などへ活動し、公的労災保険に加入できる成果を得た。この特別加入の特徴は、全体が強制加入で成り立つ大枠の制度に、任意で加入できること。そして一人で自営し専従者と営む歯科技工士も、掛け金は自営の経費で、安心な道が開けた。あとは個人の選択であるが、業務上の万が一に備える仕組みが法律上担保されることとなった。
 今後、日本歯科技工士会はこの受け皿となる事務組合を設立し、その運用は実績のある民営に委託する方法で労働保険事務を安定的に進める。近々、歯科技工士の加入手続を具体化し、募集を開始したい。
 
 
※労働者災害補償保険法施行規則及び労働保険の徴収等に関する法律施行規則一部の省令改正。公布日は令和4年5月24日、施行期日は令和4年7月1日。
1、労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号)第46条の17を改正して「歯科技工士が行う事業」を一人親方が行う事業として追加すること。
2、労働保険の徴収等の関する法律施行規則(昭和47年労働省令第8号)別表5を改正して「歯科技工士が行う事業」の第2種特別加入保険料率を1000分の3と設定すること。


 
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