『日本歯技』2023年6月号巻頭言



歯科技工士生涯研修

 日本歯科技工士会の事業の中で、歯科技工の知識及び技術の普及啓発に関する事業、すなわち学術事業は大きな柱の一つとなっている。そして「歯科技工士生涯研修」として研鑽の場を与えられていることは、歯科技工士会会員としての大きなメリットと言える。
 歯科技工士は歯科医師や歯科衛生士とともに、患者の顎口腔機能の維持改善を通じて健康を守りQOLを高める大切な役割を担っている。それを促進するには、常に最新の技術や知識を習得し更新させ、技術レベルを向上させていく必要がある。学術事業や生涯研修はこれに役立つ。
 生涯研修の意義は多岐にわたるが、第一に専門技術の向上が挙げられる。歯科技工士として、患者に最高水準の治療を提供するためには、最新の技術や知識を身につけることは言うまでもないが、一方で歯科医師や歯科衛生士との連携が求められることも多いため、他職種から講師を招いて医療チームとしての一体感を持つための研修が行われていることも生涯研修のメリットである。
 さらに、今後は生涯研修に、技術的な面だけでなく、コミュニケーション能力やマネジメントスキルなども含めて、倫理観や人間力の向上にもつなげていきたいと考えており、「日技指定研修イ」として日技が研修計画を立案して地域組織に運営をお願いする、あるいは地域組織の立案へのサポートなども行っている。この制度を利用した研修は例えば、患者とのコミュニケーション能力を高めることで信頼関係を築くことができ、治療効果の向上にもつながり、高じて職域の拡大につながることが期待される。
 また、今後、経営に関する研修も充実させ、個々の歯科技工所の運営の安定化につながれば、歯科技工士を目指す若者の増加も考えられる。
 技術革新や社会の変化が激しい現代においてスキルアップを怠ることは、自己のキャリアアップにとどまらず、業界全体の発展にも影響を与えかねない。そのため、積極的に生涯研修に取り組むことで自己投資の場としても活用いただけるよう、本会としても有益な研修プログラムを提供していきたい。

 
ページトップへ